水やりの役割

今回は栽培管理の中でも重要なものの一つである『水やり』についてです。
水やりをしっかりして大事に育てた植物が大きく育てば、それまでの苦労も忘れるぐらい嬉しいものですね。
実際に水やりを始める前に、まずは植物の生長における水の役割のおさらいから。

植物の成長における水の役割

皆さんも良くご存知の水の役割として『光合成の材料』が挙げられます。光合成は植物が生長するために使ったり、栄養を蓄えるために必要なエネルギーを生み出す植物の活動です。植物体の葉に多く見られる『葉緑体』では、太陽光のエネルギーを利用して空気から二酸化炭素を取り込み、水から分解した水素を結合させて炭水化物をつくります。
また、水が気孔から蒸散により放出されると、気化熱の分だけ茎と葉の温度が下がります。我々人間でいう汗の様な体温調節機能の役割を果たします。
さらに、気孔から水が放出されることで、根の水が地上部に吸い上げられ、その水と共に土壌中の養分も運ばれます。
光合成によりつくられた炭水化物は糖として水に溶け、根や花、果実などに運ばれます。このように土壌中の栄養や光合成で作られた養分を運ぶ役割も担います。
植物の成長における水の役割
道管 ってなぁに?道管 ってなぁに?
根から茎を通って葉まで水を運ぶ管状細胞のこと。

水やりのコツ

さて、植物の生長における水の役割はおさらいしました。
でも『よし、じゃあ今日からたっぷり水をやろう』という訳にはいきません。実は『水やり三年』と言われるほど、水やりというのは簡単なようでいてなかなか難しいものなのです。
では、何故そんなに難しいのでしょうか?
それは条件が複雑だからです。作物の種類・品種、生育時期、土壌条件、栽培方法、気候・季節条件、水やりの手段など複雑に条件が絡み合い、説明書だけを読んでもなかなか適切な水管理が出来ず、適切な水管理の方法を熟知するのに時間がかかるからなのです。
でも『初心者の私には無理なのかしら。』と落胆しなくても大丈夫です。難しいものにだってコツというのはあります。コツを掴んで、より失敗が少なくより元気な作物に育つよう、根気強く水やりを行いましょう。
まずは水管理を複雑にしているたくさんの条件の一つずつを見ていきましょう。
水やりのコツ
水やりのコツ

土について

日本各地に土の種類はたくさんあり、それは各地域で異なっています。
土が異なると、水持ちや水はけも異なり、それぞれに適切な水管理を行う必要があります。
また、同じ地域でも、土地の高低や排水路からの距離などによって排水性の良・不良などがあります。ここでは土の水はけ・水持ちを確認してみましょう。
土について
土の水持ちや水はけを確認するにはまず、菜園に水をまいてみましょう。 水がすぐにしみ込んで、すぐに乾くようであれば、水はけは非常に優れていますが、水持ちが良くない土です。乾燥が激しい場合は、表面が乾いていたら水をやるなどし、こまめにしましょう。
 水が土の中にしみ込まずに水たまりが出来たり、しみ込んでもドロドロの粘土状になるようであれば、水持ちは非常に優れます。しかし、水はけが良くありません。水たまりができる場合は、地中に水がしみ込むのを待って何回かに分けて水をやりましょう。
 また、土の表面が乾いても、地中が湿っている場合は、地中が過湿気味になり、根の伸長が遅れたり根腐れを引き起こす可能性があります。ですので地中が湿っているかどうかを確認してから水をやりましょう。
園芸用品店で売られている土と混ぜて土の水持ちや水はけを良くするのも良いでしょう。
土について
コンテナ栽培などではお手持ちの土地の土を使う以外にも、複数の種類の土を購入し、混ぜることが出来ます。是非、栽培作物に適した土を選んで、土に合った水管理を心掛けて下さい。 (ヰセキ関東のサイトで培土の詳細がご覧になれます)
土について
また、乾燥し易い土壌においてしきわらを行って土の湿度を保ったり、
うねを立てることで水はけを良くすることもできます。
土について
このように水と土の関わりは大きいため、水やりを考える場合、水のやり方だけではなく土にも目を向けてやることも大事です。