AGRI NEWS [MAFF アプリ連携-農林水産省]
2022年01月05日
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有機農産物等を販売する「ナチュラルフードストア旬楽膳」との意見交換 ~みどりの食料システム戦略を考えるシリーズ~(東海農政局 TOKAIミニコミ)
東海農政局は、東海地域で展開している食品関連企業を訪問して、企業活動の中で食品の安全・安心と消費者の信頼確保に取り組んでいる状況を取材して「TOKAIミニコミ」として配信しています。
第14回は愛知県内で有機農産物などを販売するナチュラルフードストア「旬楽膳(しゅんらくぜん)」 。その規模は、全国最大級です。リモート対談を行いました。
(旬楽膳)(株)カネスエ商事 代表取締役 牛田彰 会長・ 今尾 幸造 取締役
(東海農政局)東海農政局消費・安全部長 島村知亨
“「旬楽膳」を2003年(平成15年)オープン” ~有機栽培等を行う生産者と出会うために全国を練り歩きました~
(東海農政局)
本日は、よろしくお願いいたします。
旬楽膳は、有機栽培等、栽培方法にこだわった農産物を販売するスーパーマーケットとして注目されています。このような特徴ある店舗にしようと考えられた経緯など教えてください。
(旬楽膳)
旬楽膳は、2003年にオープンしました。農産物は、有機栽培等を約6割、残りの約4割は、減農薬・減化学肥料栽培のものを販売しています。自ら(牛田会長)の病気により食生活を見直したことがきっかけで、これからは、有機栽培等の農産物を求める人が増えるのではと考え、有機栽培を行う生産者「群馬県 倉渕村 (故)諸橋さん」と出会ったことが始まりです。全国の有機栽培等の農業者のリストを手がかりに、2年間かけて、北海道から沖縄県まで全国の有機栽培等を行う生産者と出会い、結びつきを強め、年間の供給体制を構築し、2003年に第1号店をオープンすることができました。現在、5店舗に拡大しています。
“自然に合せる。だから、いつも「旬野菜」”
(東海農政局)
有機栽培等の農産物に対する消費者ニーズをどのように捉えていますか。また、有機栽培等の農産物に特化したスーパーマーケットならではの特徴などを教えてください。
(旬楽膳)
有機栽培等の農産物に対するニーズは、着実にあると考えます。旬楽膳では、売り上げや、お客さまからの反応からリアルに伺うことができます。ただ、お客さまの多くは、有機栽培等の生産現場をよくご存じではないので、慣行栽培との違いや有機栽培等への理解度は十分でないと感じています。旬楽膳の野菜は、いつも旬のものが並びます。野菜には端境期があり、収穫のない時期には、例えば「大根がない」「トマトがない」ということがあります。「ない」ことが自然で、自然に合せるから、店頭に並ぶのはいつも「旬野菜」です。販売面で難しいのは、有機栽培等と慣行栽培の農産物との外観等の違いをどのように説明するかという点です。有機栽培等は、形がいびつだったり、不揃いだったりします。一般のスーパーマーケットでは、有機と慣行の差をお客さまに説明するのが難しく、20年ほど前に、有機栽培等の農産物などに特化した店として「旬楽膳」をオープンすることを決意しました。お客さまには、有機栽培等の農産物の特徴を理解いただき、ご購入いただいています。
“生産者との提携” ~農家の情報をお客様につなげます~
(東海農政局)
旬楽膳とつながる生産者は、安定的な出荷ができるため、経営的な強みになっていますね。
(旬楽膳)
生産者からは、提携という形で仕入れています。提携とは、店側からは発注をせず、生産者が出荷できる量を旬楽膳に出荷するという形です。旬楽膳は、生産者から仕入れ値を値切りません。また、5店舗という小回りのきくマーケットならではの直接仕入れのため、生産者の手取り額も多くなります。また、お客さまには、旬の一番おいしい時期に比較的安く届けることができるシステムです。出荷が多い時は、他店より小売価格が安くなる場合もあります。旬楽膳では、生産者の情報を消費者に伝えていますが、最近、コロナ禍によりリモートが進み、生産者から消費者へダイレクトに情報(畑の状況や野菜の情報など)が伝えられたり、生産者と消費者とが繋がるLINEグループも作られています。このような相互理解は、農家の強みになるはずです。
“プライベート・ブランドは約180品目。原料や製造方法にこだわり、加工食品販売数の30パーセントを占めています。”
(東海農政局)
プライベート・ブランドの特徴について教えてください。
(旬楽膳)
旬楽膳は、原材料や調理方法にこだわった加工食品に力を入れています。プライベート・ブランド商品は約180品目と多くの商品を取り揃えています。加工食品に使用する原材料は食材の安全性と製造工程の安全性の確認を行っています。加工食品の販売数の30パーセント以上は、プライベートブランド商品が占めています。
“「お客さまの声」アンケートから” ~栽培方法が知りたいという声が多い~
(東海農政局)
農産物を購入されるお客さまの声は、具体的にどのようなものでしょうか。
(旬楽膳)
一般社団法人 日本ヘルスケア協会 健康推進部が行う実証試験に応募し、お客さまに対してアンケート(4店/5店)を行いました。アンケートにおいて、「野菜で何を一番気にしているか」(複数回答)と質問したところ、第1位が「農薬や肥料について何をどの程度使われているのか知りたい(7割以上)」、第2位に「栽培方法を知りたい(約5割)」、第3位が「この野菜の一番おいしい時期はいつか(約5割)」でした。当社としては、仕入れる野菜の栽培管理表を取得し、当社の安全基準を満たしているか確認していますが、多くのお客さまは、どのような農薬や肥料等を使用して栽培された農産物なのかという情報を求められていることがわかりました。引き続き、お客さまへの情報提供のあり方を模索していきます。
“公益財団法人 足ル知ル生活の取り組み” ~有機栽培等に触れる交流活動~
(東海農政局)
2018年豊かなむらづくり全国表彰事業において、内閣総理大臣賞を受賞した岐阜県白川町の「特定非営利活動法人 ゆうきハートネット」と提携され、農産物を仕入れておられますが、身近な東海地域の生産者との結びつきを重要視されていますか。
(旬楽膳)
当社は、「財団法人 足ル知ル生活」という財団を2013年12月に立ち上げました。(2019年4月に公益財団法人に変更)財団において、東海地域の有機農業を行う生産者と会員(消費者)の交流を行う事業を行っています。現在、会員は約100名。 「ゆうきハートネット」は、この事業目的を理解して中心的に協力いただいています。交流事業の内容は、伝統的な食文化や食習慣に関する学習教室及び有機農業の体験教室です。子供たちの学習教室及び農業体験教室を「ネイチャーキッズ」と呼び、播種、定植、収穫の体験のほか、子供たち自らが昼ごはんの調理を行い、親子で共に食事を楽しむという内容で行っています。このような体験学習は、農業への理解、つくる人 への感謝、料理や食べることへの楽しさ、環境の大切さなど、子供たちの心も育てます。有機農業の発展のためには、このような体験活動も重要です。今後も、身近な地域の生産者と連携していきたいと思っています。
※現在はコロナ感染症防止のため、交流活動を中止しています。 (令和3年8月現在)
“有機農産物等の認知度アップ” ~まずは、有機農業を知ってもらうことです~
(東海農政局)
農林水産省は、本年5月「みどりの食料システム戦略」を策定しました。この中でも、有機農業の取組面積の拡大など、有機農業の推進が大きなテーマとなっています。有機農産物等を多く扱われている企業として、今後、国内の有機農業の認知度をアップするためには、どのような取組が必要なのか、さらに消費者の購入の機会を増やすためにはどうすれば良いでしょうか。
(旬楽膳)
有機農産物等の認知度を上げるためには、有機栽培等がいかに環境に負荷をかけない栽培方法であるかを、もっと消費者の方に知っていただくべきですね。有機JASマークの意味も理解が深まるように進めるべきだと思います。最近の消費者の方々は、自らの消費行動が「誰かの役に立っているか」「何かに貢献できているか」を考えておられます。有機農業のプラス効果の理解が進めば、有機農産物等の満足度がもっとアップするのではないでしょうか。食品の安全面では、科学的根拠に基づいた説明が必要ですね。オーガニックは体に良いと言えますが、最近では農薬等の安全性も改善がされており、慣行栽培の農産物が体に悪いとは言えません。むしろ、環境(土壌・水・空気)への影響を考えれば、化学肥料の方が問題ですね。肥料過多がもたらす硝酸態窒素等は、土壌への残留、水質汚染や温室効果ガスの発生など、環境へのリスクが高いと言えます。
“自分たちの食するものは国内で”
(東海農政局)
有機農業はヨーロッパが先行しており、今後もヨーロッパの生産拡大が進み、有機農産物の輸入が増えていく可能性があります。国産の有機農産物等、輸入農産物に対抗するためにはどうしていくべきですか。
(旬楽膳)
有機農産物等は、輸入食品もありますが、可能ならば近くで栽培された農産物を仕入れたいです。近くであれば流通コストもかからず、地域の生産者を応援できます。また、「地産地消」や「身土不二」という食の原点の考え方につながります。自分たちが食するものは基本的に、自分たちが作る、国内でつくるべきだと思います。当社は、生産者から直接仕入れをしていますが、有機農産物等の規模拡大につながるのであれば、JAや他の流通業者等ともタッグを組むことを否定しません。国内の有機農産物等の生産が活性化されることに貢献したいと考えています。
“冷蔵集出荷施設の整備”
(東海農政局)
農家と接する機会が多いと思います。生産者をどのように後押しすれば、生産性がアップすると思われますか。
(旬楽膳)
有機栽培を行う生産者の農産物の鮮度や品質を良好に保つためには、産地に冷蔵のできる集出荷施設が必要です。整備が進むと多少の出荷量変動に対応しやすくなり、さらなる品質向上、販売額のアップ、生産性の向上につながると思います。
“有機農業の生産性向上のため、ファームアウトとマーケットインの一体となった発想を”
(東海農政局)
生産者と消費者をつなぐ立場におられますが、有機農業が活性化するためにはどのようなことが必要ですか。
(旬楽膳)
これからは、生産を基にした発想(ファームアウト)とともに、お客さまが何を望んでいるかという発想(マーケットイン)が必要ですね。特に当社は、生産者から直接仕入れ、お客さまに販売するという小回りのきくマーケットですので、お客さまがどのような品目を望んでいるかをつかみ、販売計画を作成し、その計画を基に、生産者が必要な品目や数量を生産する計画を立てれば、生産者の生産性を上げることができると思います。生産性が上がれば価格を下げることも可能になります。そのような手法を取り入れるべきだと思います。
“野菜をもっと食べよう”“食事バランスが最も大切” ~国民に役立つ正しい情報発信を~
(東海農政局)
行政へのご意見をお願いします。
(旬楽膳)
国民の健康を考えた場合、もっと野菜を食べるように先導すべきだと思います。1日350グラムの野菜を摂取するよう推奨されていますが、簡単でありません。食事で大切なのは、野菜をしっかり食べ、また、肉・魚・果物などを含めバランスよく食べることや、栄養を効率よく、より安全に摂取するための調理方法を取り入れることです。また、「有機栽培だから安心」と過信しすぎて、食事バランスを疎かに考えるようなことがあれば、とても残念です。当社は、健康に役立つことを正しくお客さまに伝えるための努力を行っていますが、うまく伝わっていないとジレンマを感じることもあります。行政機関にはぜひ、正確で生活に役立つ情報発信をお願いしたいと思います。当社では、名古屋学芸大学と産学連携を行い、管理栄養学科とメディア学科のゼミ生に、自社が取り扱う製品について畑で作る状況を体験していただき、レポートにまとめ、管理栄養学科のゼミ生がメニューを考案する取組を進めています。このような取組で、健康を考えたバランスの良い食事の重要性が伝えられればと思っています。(取材:令和3年7月28日)
第14回は愛知県内で有機農産物などを販売するナチュラルフードストア「旬楽膳(しゅんらくぜん)」 。その規模は、全国最大級です。リモート対談を行いました。
(旬楽膳)(株)カネスエ商事 代表取締役 牛田彰 会長・ 今尾 幸造 取締役
(東海農政局)東海農政局消費・安全部長 島村知亨
“「旬楽膳」を2003年(平成15年)オープン” ~有機栽培等を行う生産者と出会うために全国を練り歩きました~
(東海農政局)
本日は、よろしくお願いいたします。
旬楽膳は、有機栽培等、栽培方法にこだわった農産物を販売するスーパーマーケットとして注目されています。このような特徴ある店舗にしようと考えられた経緯など教えてください。
(旬楽膳)
旬楽膳は、2003年にオープンしました。農産物は、有機栽培等を約6割、残りの約4割は、減農薬・減化学肥料栽培のものを販売しています。自ら(牛田会長)の病気により食生活を見直したことがきっかけで、これからは、有機栽培等の農産物を求める人が増えるのではと考え、有機栽培を行う生産者「群馬県 倉渕村 (故)諸橋さん」と出会ったことが始まりです。全国の有機栽培等の農業者のリストを手がかりに、2年間かけて、北海道から沖縄県まで全国の有機栽培等を行う生産者と出会い、結びつきを強め、年間の供給体制を構築し、2003年に第1号店をオープンすることができました。現在、5店舗に拡大しています。
“自然に合せる。だから、いつも「旬野菜」”
(東海農政局)
有機栽培等の農産物に対する消費者ニーズをどのように捉えていますか。また、有機栽培等の農産物に特化したスーパーマーケットならではの特徴などを教えてください。
(旬楽膳)
有機栽培等の農産物に対するニーズは、着実にあると考えます。旬楽膳では、売り上げや、お客さまからの反応からリアルに伺うことができます。ただ、お客さまの多くは、有機栽培等の生産現場をよくご存じではないので、慣行栽培との違いや有機栽培等への理解度は十分でないと感じています。旬楽膳の野菜は、いつも旬のものが並びます。野菜には端境期があり、収穫のない時期には、例えば「大根がない」「トマトがない」ということがあります。「ない」ことが自然で、自然に合せるから、店頭に並ぶのはいつも「旬野菜」です。販売面で難しいのは、有機栽培等と慣行栽培の農産物との外観等の違いをどのように説明するかという点です。有機栽培等は、形がいびつだったり、不揃いだったりします。一般のスーパーマーケットでは、有機と慣行の差をお客さまに説明するのが難しく、20年ほど前に、有機栽培等の農産物などに特化した店として「旬楽膳」をオープンすることを決意しました。お客さまには、有機栽培等の農産物の特徴を理解いただき、ご購入いただいています。
“生産者との提携” ~農家の情報をお客様につなげます~
(東海農政局)
旬楽膳とつながる生産者は、安定的な出荷ができるため、経営的な強みになっていますね。
(旬楽膳)
生産者からは、提携という形で仕入れています。提携とは、店側からは発注をせず、生産者が出荷できる量を旬楽膳に出荷するという形です。旬楽膳は、生産者から仕入れ値を値切りません。また、5店舗という小回りのきくマーケットならではの直接仕入れのため、生産者の手取り額も多くなります。また、お客さまには、旬の一番おいしい時期に比較的安く届けることができるシステムです。出荷が多い時は、他店より小売価格が安くなる場合もあります。旬楽膳では、生産者の情報を消費者に伝えていますが、最近、コロナ禍によりリモートが進み、生産者から消費者へダイレクトに情報(畑の状況や野菜の情報など)が伝えられたり、生産者と消費者とが繋がるLINEグループも作られています。このような相互理解は、農家の強みになるはずです。
“プライベート・ブランドは約180品目。原料や製造方法にこだわり、加工食品販売数の30パーセントを占めています。”
(東海農政局)
プライベート・ブランドの特徴について教えてください。
(旬楽膳)
旬楽膳は、原材料や調理方法にこだわった加工食品に力を入れています。プライベート・ブランド商品は約180品目と多くの商品を取り揃えています。加工食品に使用する原材料は食材の安全性と製造工程の安全性の確認を行っています。加工食品の販売数の30パーセント以上は、プライベートブランド商品が占めています。
“「お客さまの声」アンケートから” ~栽培方法が知りたいという声が多い~
(東海農政局)
農産物を購入されるお客さまの声は、具体的にどのようなものでしょうか。
(旬楽膳)
一般社団法人 日本ヘルスケア協会 健康推進部が行う実証試験に応募し、お客さまに対してアンケート(4店/5店)を行いました。アンケートにおいて、「野菜で何を一番気にしているか」(複数回答)と質問したところ、第1位が「農薬や肥料について何をどの程度使われているのか知りたい(7割以上)」、第2位に「栽培方法を知りたい(約5割)」、第3位が「この野菜の一番おいしい時期はいつか(約5割)」でした。当社としては、仕入れる野菜の栽培管理表を取得し、当社の安全基準を満たしているか確認していますが、多くのお客さまは、どのような農薬や肥料等を使用して栽培された農産物なのかという情報を求められていることがわかりました。引き続き、お客さまへの情報提供のあり方を模索していきます。
“公益財団法人 足ル知ル生活の取り組み” ~有機栽培等に触れる交流活動~
(東海農政局)
2018年豊かなむらづくり全国表彰事業において、内閣総理大臣賞を受賞した岐阜県白川町の「特定非営利活動法人 ゆうきハートネット」と提携され、農産物を仕入れておられますが、身近な東海地域の生産者との結びつきを重要視されていますか。
(旬楽膳)
当社は、「財団法人 足ル知ル生活」という財団を2013年12月に立ち上げました。(2019年4月に公益財団法人に変更)財団において、東海地域の有機農業を行う生産者と会員(消費者)の交流を行う事業を行っています。現在、会員は約100名。 「ゆうきハートネット」は、この事業目的を理解して中心的に協力いただいています。交流事業の内容は、伝統的な食文化や食習慣に関する学習教室及び有機農業の体験教室です。子供たちの学習教室及び農業体験教室を「ネイチャーキッズ」と呼び、播種、定植、収穫の体験のほか、子供たち自らが昼ごはんの調理を行い、親子で共に食事を楽しむという内容で行っています。このような体験学習は、農業への理解、つくる人 への感謝、料理や食べることへの楽しさ、環境の大切さなど、子供たちの心も育てます。有機農業の発展のためには、このような体験活動も重要です。今後も、身近な地域の生産者と連携していきたいと思っています。
※現在はコロナ感染症防止のため、交流活動を中止しています。 (令和3年8月現在)
“有機農産物等の認知度アップ” ~まずは、有機農業を知ってもらうことです~
(東海農政局)
農林水産省は、本年5月「みどりの食料システム戦略」を策定しました。この中でも、有機農業の取組面積の拡大など、有機農業の推進が大きなテーマとなっています。有機農産物等を多く扱われている企業として、今後、国内の有機農業の認知度をアップするためには、どのような取組が必要なのか、さらに消費者の購入の機会を増やすためにはどうすれば良いでしょうか。
(旬楽膳)
有機農産物等の認知度を上げるためには、有機栽培等がいかに環境に負荷をかけない栽培方法であるかを、もっと消費者の方に知っていただくべきですね。有機JASマークの意味も理解が深まるように進めるべきだと思います。最近の消費者の方々は、自らの消費行動が「誰かの役に立っているか」「何かに貢献できているか」を考えておられます。有機農業のプラス効果の理解が進めば、有機農産物等の満足度がもっとアップするのではないでしょうか。食品の安全面では、科学的根拠に基づいた説明が必要ですね。オーガニックは体に良いと言えますが、最近では農薬等の安全性も改善がされており、慣行栽培の農産物が体に悪いとは言えません。むしろ、環境(土壌・水・空気)への影響を考えれば、化学肥料の方が問題ですね。肥料過多がもたらす硝酸態窒素等は、土壌への残留、水質汚染や温室効果ガスの発生など、環境へのリスクが高いと言えます。
“自分たちの食するものは国内で”
(東海農政局)
有機農業はヨーロッパが先行しており、今後もヨーロッパの生産拡大が進み、有機農産物の輸入が増えていく可能性があります。国産の有機農産物等、輸入農産物に対抗するためにはどうしていくべきですか。
(旬楽膳)
有機農産物等は、輸入食品もありますが、可能ならば近くで栽培された農産物を仕入れたいです。近くであれば流通コストもかからず、地域の生産者を応援できます。また、「地産地消」や「身土不二」という食の原点の考え方につながります。自分たちが食するものは基本的に、自分たちが作る、国内でつくるべきだと思います。当社は、生産者から直接仕入れをしていますが、有機農産物等の規模拡大につながるのであれば、JAや他の流通業者等ともタッグを組むことを否定しません。国内の有機農産物等の生産が活性化されることに貢献したいと考えています。
“冷蔵集出荷施設の整備”
(東海農政局)
農家と接する機会が多いと思います。生産者をどのように後押しすれば、生産性がアップすると思われますか。
(旬楽膳)
有機栽培を行う生産者の農産物の鮮度や品質を良好に保つためには、産地に冷蔵のできる集出荷施設が必要です。整備が進むと多少の出荷量変動に対応しやすくなり、さらなる品質向上、販売額のアップ、生産性の向上につながると思います。
“有機農業の生産性向上のため、ファームアウトとマーケットインの一体となった発想を”
(東海農政局)
生産者と消費者をつなぐ立場におられますが、有機農業が活性化するためにはどのようなことが必要ですか。
(旬楽膳)
これからは、生産を基にした発想(ファームアウト)とともに、お客さまが何を望んでいるかという発想(マーケットイン)が必要ですね。特に当社は、生産者から直接仕入れ、お客さまに販売するという小回りのきくマーケットですので、お客さまがどのような品目を望んでいるかをつかみ、販売計画を作成し、その計画を基に、生産者が必要な品目や数量を生産する計画を立てれば、生産者の生産性を上げることができると思います。生産性が上がれば価格を下げることも可能になります。そのような手法を取り入れるべきだと思います。
“野菜をもっと食べよう”“食事バランスが最も大切” ~国民に役立つ正しい情報発信を~
(東海農政局)
行政へのご意見をお願いします。
(旬楽膳)
国民の健康を考えた場合、もっと野菜を食べるように先導すべきだと思います。1日350グラムの野菜を摂取するよう推奨されていますが、簡単でありません。食事で大切なのは、野菜をしっかり食べ、また、肉・魚・果物などを含めバランスよく食べることや、栄養を効率よく、より安全に摂取するための調理方法を取り入れることです。また、「有機栽培だから安心」と過信しすぎて、食事バランスを疎かに考えるようなことがあれば、とても残念です。当社は、健康に役立つことを正しくお客さまに伝えるための努力を行っていますが、うまく伝わっていないとジレンマを感じることもあります。行政機関にはぜひ、正確で生活に役立つ情報発信をお願いしたいと思います。当社では、名古屋学芸大学と産学連携を行い、管理栄養学科とメディア学科のゼミ生に、自社が取り扱う製品について畑で作る状況を体験していただき、レポートにまとめ、管理栄養学科のゼミ生がメニューを考案する取組を進めています。このような取組で、健康を考えたバランスの良い食事の重要性が伝えられればと思っています。(取材:令和3年7月28日)
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情報元: 東海農政局
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