AGRI NEWS [MAFF アプリ連携-農林水産省]
2020年10月29日
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農業DXの事例紹介①ぶった農産のスマートライスセンター
(写真上:佛田社長にライスセンターを紹介いただきました)
(写真下:ライスセンターの様子)
今、社会全体で、デジタル技術を活用して産業や社会をより良いものへと変革を目指すデジタルトランスフォーメーション(DX)の取組が進められています。
農林水産省としても、農業や食関連業界の関係者の皆様に、通信機能を備えたセンサーやロボット、AIなどのデジタル技術を経営に活かしていただきたいと考えていますが、現場からは、「デジタル化やDXという言葉を聞くようになったがどういう意味だろう」、「参考にできる事例はないのか」といった声が聞かれます。
そこで、多くの皆様に農業分野でのDXの具体的なイメージを持っていただけるよう、農業や食関連業界におけるDXの実践事例を紹介していきます。
第1回目の今回は、石川県野々市市で米の生産や農作物等の加工・販売などを展開している株式会社ぶった農産の取組を紹介します。同社の佛田社長にインタビューしました。
――本日はよろしくお願いします。まず、佛田社長が取り組まれている内容を教えてください。
当社では従来から栽培や販売管理でデータ活用を進めてきましたが、今年8月、40年ほど前に建てたライスセンターに新たに乾燥機、籾摺機、光選別機を導入し、リノベーションするのに併せて、乾燥調製のデータと栽培管理のデータ連携を進めることにしました。
コンバインでほ場ごとに収穫量と水分量がわかるのですが、今回整備した穀物乾燥機で乾燥処理重量と水分量が、穀粒判別機で整粒や着色粒等のデータが収集され、無線LANでリアルタイムにサーバに送られるようになっています。
また、穀物乾燥機のタンク上部にカメラを設置しました。これにより、上まで登らなくてもタンク内の米の量が画像でわかるようになり、とても便利になりました。ほかにも、穀粒判別機の試料を採取するオートサンプラーにもカメラを設置することで、サンプリングの正確性を客観的に確認できるようにしました。
――今回のリノベーションにはどのようなねらいがあるのでしょうか。
乾燥調製時のデータを施肥や水管理など栽培時のデータを工程ごとに紐づけて連携させることで、栽培管理上の課題にフィードバックすることができます。気温や日照などの気象データも含め、筆ごとの生産履歴との重ね合わせや比較を行うことで翌年以降の生産改善につなげることができると考えています。
また、従業員の間で、収穫前から後まで一連の情報を具体的な文字・数値のデータとして共有できるようになりました。昔は、「あっちのあの田んぼをこういう風にああやっておけ」といった指導を受けたものですが(笑)、経験と勘は人にはなかなか伝えられません。データを見える化することで暗黙知を形式知に変えることができるのです。
経営者の立場からは、当社はGAPを取得しているのですが、カメラの画像を保存することで、GAPで求められているマネジメントの信頼性向上にもつながると思っています。
――従業員の方々の技術の向上にもつながっているのですね。
はい。データを基に機械や米と「対話」ができるようになりました。対話と実践を重ねることで、機械の扱い方も変わってくる。ミスも減りますし、技術力も上がっていきます。
当社では米や野菜の生産、加工・販売も手掛けており、マルチタスクが求められますが、データの見える化で繁閑のフラット化が容易になりました。
また、「つぶやきシステム」というものの導入も進めています。ほ場やライスセンターでの作業中に従業員がつぶやいた内容が文字に起こされて、「いつ・誰が・どこで・何をつぶやいたか」がチャット形式でみんなが見られるようにしています。従業員間の情報共有だけでなく、自分との対話・振り返りもできるようになります。
――販売面でのデータ活用についても何か検討されていますか。
農産物の生産段階のDXだけではなく、お客様に何を届けられるかを考えなければならないと思っています。データ連携はあくまでも手段で、それぞれのお客様にどんなバリュー、ベネフィットを提供できるかが重要です。
当社では20年以上、当社販売店でのお客様情報の管理を進めてきました。今回のリノベーションで米の状態もデータとしてつかめるようになったので、農薬や肥料などの生産履歴だけでなく、乾燥調製のデータも組み合わせてお客様にさらなるベネフィットを届けたいと思っています。すでに当社の商品に共感してくださっている方だけでなく、農産物に関心の高い消費者の皆さまや、スーパーのバイヤー、卸売業者の担当者にも当社商品についてより詳しく解説できるようになります。
――消費者や実需者にはどのようにしたら情報を伝えることができるでしょうか。
例えば米袋であれば、QRコードを貼って、そこから情報にアクセスできるようにすることも考えています。当社は事業者コードを取得しているので、JANコードを貼ることも考えられますね。年代ごとに情報やデバイスとの親和性は異なることも考慮してマーケティングを進めていこうと思っています。
データを把握・保管しておくことは、トレーサビリティを高めて消費者の安心につながるし、規制の厳しい国への輸出を進める上でも重要になると思っています。
――将来的な展望を教えてください。
今回整備した「スマートライスセンター」により、「この筆で肥料や農薬をこれだけ使ったらこれだけの量・品質の米が収穫できた」といった情報が得られ、翌年以降の生産につなげられるようになったわけですが、こうしたデータが今後5年、10年と積み重なっていけば、肥料の種類・量、水管理などの栽培方法や気象情報、収穫量、乾燥時のデータ等、あらゆる情報を組み合わせて仮説・検証し、生産方法の改善を繰り返していく、いわばデータ連携駆動型の農業が可能になります。
――データの収集、分析を繰り返していくことで、新しい可能性が見えてくるのではないか、ということでしょうか。
そうですね。新しい技術を取り入れるには実証が必要ですが、実証だけではなく実践を繰り返していくことが不可欠です。
――最後に一言お願いします。
私は、ライスセンターの40年ぶりの改修の機をとらえて、データの収集・分析ができるスマート化を進めました。DXといっても、そんなに難しい話ではないと思っています。ハイテクだけでなくローテクも組み合わせています。今の時代、農業でもデジタル技術の活用を前提として考えなければなりません。その上で、デジタル技術を使って何をするのか、考えることが必要と思っています。日本国内だけでなく、日本の農産物を求める世界の方々に向けて、私たちの農産物を届けていくために、これからもDXを進めていきます。
――ありがとうございました。
===
いかがでしたか。今回は、スマートライスセンターでDXに取り組む佛田社長を紹介しました。今後も、DXに取り組む農業・食品産業の方を取材・紹介していきます。
それでは!
(写真下:ライスセンターの様子)
今、社会全体で、デジタル技術を活用して産業や社会をより良いものへと変革を目指すデジタルトランスフォーメーション(DX)の取組が進められています。
農林水産省としても、農業や食関連業界の関係者の皆様に、通信機能を備えたセンサーやロボット、AIなどのデジタル技術を経営に活かしていただきたいと考えていますが、現場からは、「デジタル化やDXという言葉を聞くようになったがどういう意味だろう」、「参考にできる事例はないのか」といった声が聞かれます。
そこで、多くの皆様に農業分野でのDXの具体的なイメージを持っていただけるよう、農業や食関連業界におけるDXの実践事例を紹介していきます。
第1回目の今回は、石川県野々市市で米の生産や農作物等の加工・販売などを展開している株式会社ぶった農産の取組を紹介します。同社の佛田社長にインタビューしました。
――本日はよろしくお願いします。まず、佛田社長が取り組まれている内容を教えてください。
当社では従来から栽培や販売管理でデータ活用を進めてきましたが、今年8月、40年ほど前に建てたライスセンターに新たに乾燥機、籾摺機、光選別機を導入し、リノベーションするのに併せて、乾燥調製のデータと栽培管理のデータ連携を進めることにしました。
コンバインでほ場ごとに収穫量と水分量がわかるのですが、今回整備した穀物乾燥機で乾燥処理重量と水分量が、穀粒判別機で整粒や着色粒等のデータが収集され、無線LANでリアルタイムにサーバに送られるようになっています。
また、穀物乾燥機のタンク上部にカメラを設置しました。これにより、上まで登らなくてもタンク内の米の量が画像でわかるようになり、とても便利になりました。ほかにも、穀粒判別機の試料を採取するオートサンプラーにもカメラを設置することで、サンプリングの正確性を客観的に確認できるようにしました。
――今回のリノベーションにはどのようなねらいがあるのでしょうか。
乾燥調製時のデータを施肥や水管理など栽培時のデータを工程ごとに紐づけて連携させることで、栽培管理上の課題にフィードバックすることができます。気温や日照などの気象データも含め、筆ごとの生産履歴との重ね合わせや比較を行うことで翌年以降の生産改善につなげることができると考えています。
また、従業員の間で、収穫前から後まで一連の情報を具体的な文字・数値のデータとして共有できるようになりました。昔は、「あっちのあの田んぼをこういう風にああやっておけ」といった指導を受けたものですが(笑)、経験と勘は人にはなかなか伝えられません。データを見える化することで暗黙知を形式知に変えることができるのです。
経営者の立場からは、当社はGAPを取得しているのですが、カメラの画像を保存することで、GAPで求められているマネジメントの信頼性向上にもつながると思っています。
――従業員の方々の技術の向上にもつながっているのですね。
はい。データを基に機械や米と「対話」ができるようになりました。対話と実践を重ねることで、機械の扱い方も変わってくる。ミスも減りますし、技術力も上がっていきます。
当社では米や野菜の生産、加工・販売も手掛けており、マルチタスクが求められますが、データの見える化で繁閑のフラット化が容易になりました。
また、「つぶやきシステム」というものの導入も進めています。ほ場やライスセンターでの作業中に従業員がつぶやいた内容が文字に起こされて、「いつ・誰が・どこで・何をつぶやいたか」がチャット形式でみんなが見られるようにしています。従業員間の情報共有だけでなく、自分との対話・振り返りもできるようになります。
――販売面でのデータ活用についても何か検討されていますか。
農産物の生産段階のDXだけではなく、お客様に何を届けられるかを考えなければならないと思っています。データ連携はあくまでも手段で、それぞれのお客様にどんなバリュー、ベネフィットを提供できるかが重要です。
当社では20年以上、当社販売店でのお客様情報の管理を進めてきました。今回のリノベーションで米の状態もデータとしてつかめるようになったので、農薬や肥料などの生産履歴だけでなく、乾燥調製のデータも組み合わせてお客様にさらなるベネフィットを届けたいと思っています。すでに当社の商品に共感してくださっている方だけでなく、農産物に関心の高い消費者の皆さまや、スーパーのバイヤー、卸売業者の担当者にも当社商品についてより詳しく解説できるようになります。
――消費者や実需者にはどのようにしたら情報を伝えることができるでしょうか。
例えば米袋であれば、QRコードを貼って、そこから情報にアクセスできるようにすることも考えています。当社は事業者コードを取得しているので、JANコードを貼ることも考えられますね。年代ごとに情報やデバイスとの親和性は異なることも考慮してマーケティングを進めていこうと思っています。
データを把握・保管しておくことは、トレーサビリティを高めて消費者の安心につながるし、規制の厳しい国への輸出を進める上でも重要になると思っています。
――将来的な展望を教えてください。
今回整備した「スマートライスセンター」により、「この筆で肥料や農薬をこれだけ使ったらこれだけの量・品質の米が収穫できた」といった情報が得られ、翌年以降の生産につなげられるようになったわけですが、こうしたデータが今後5年、10年と積み重なっていけば、肥料の種類・量、水管理などの栽培方法や気象情報、収穫量、乾燥時のデータ等、あらゆる情報を組み合わせて仮説・検証し、生産方法の改善を繰り返していく、いわばデータ連携駆動型の農業が可能になります。
――データの収集、分析を繰り返していくことで、新しい可能性が見えてくるのではないか、ということでしょうか。
そうですね。新しい技術を取り入れるには実証が必要ですが、実証だけではなく実践を繰り返していくことが不可欠です。
――最後に一言お願いします。
私は、ライスセンターの40年ぶりの改修の機をとらえて、データの収集・分析ができるスマート化を進めました。DXといっても、そんなに難しい話ではないと思っています。ハイテクだけでなくローテクも組み合わせています。今の時代、農業でもデジタル技術の活用を前提として考えなければなりません。その上で、デジタル技術を使って何をするのか、考えることが必要と思っています。日本国内だけでなく、日本の農産物を求める世界の方々に向けて、私たちの農産物を届けていくために、これからもDXを進めていきます。
――ありがとうございました。
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いかがでしたか。今回は、スマートライスセンターでDXに取り組む佛田社長を紹介しました。今後も、DXに取り組む農業・食品産業の方を取材・紹介していきます。
それでは!
参考記事
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情報元: 農林水産省
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