AGRI NEWS [MAFF アプリ連携-農林水産省]
2020年07月27日
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【INACOME】「人材シェアリング」が拓く新たな農業(シェアグリ・井出飛悠人さん)
農山漁村の活性化に向けて、地域起業者の交流を促すプラットフォームINACOME(イナカム)。
MAFFアプリでは、ビジネスモデルからは把握しづらい起業者の想いやビジョンを広く知っていただくために、INACOME参加起業者のインタビュー記事を掲載します。
今回は、本年2月のINACOMEビジネスコンテストにおいて、「シェアグリ~農家と働き手の短期マッチング、農業の人出不足解消~」をプレゼンした(株)シェアグリの代表取締役CEO・井出飛悠人さんにお話を伺いました。
■「シェアリング」の大きな可能性
-現在の事業概要を教えてください。
農業分野で特定技能※の在留資格を得た外国人(以下、特定技能外国人)を直接雇用し、農繁期の短期的な人手を必要としている農業者に対して、必要な期間に必要な人数だけ特定技能外国人を派遣するビジネスを展開しています。
特定技能外国人は既に農業の経験があり、日本語も多少は話せることから、農業者も一から教える必要がありません。さらに、特定技能外国人は5年の在留期間があるので、例えば葉物野菜を生産する農業者だと、長野→茨城、群馬→千葉といったように、繁忙期がずれる地域で同じ人が回りながら作業するような仕組みを構築することを目指しています。
そうすることで、来年・再来年も同じ特定技能外国人が来てくれて、農業者は同じ作業を何度も教える必要がなく効率的に作業ができ、信頼関係を築くことができます。産地間で人材のシェアリングを行うことで人件費も節約でき、農業者にとって大きなメリットになります。
-どのような農業者に利用されていますか?
比較的大規模な農業者で、農繁期と農閑期の差が大きい果樹や葉物などの農業者に特に利用されています。また、過去に特定技能外国人の受け入れ経験があれば、宿泊施設等を整備していることが多く、特定技能外国人の滞在にも対応できるので、よりスムーズにご利用いただけると思います。
■ミッションは「農業の人手不足解消」
-元々起業に関心をお持ちだったのですか?
長野県佐久市の生まれで、実家が種苗会社を営んでいたこともあり、元々経営に関心はありました。
また、将来は地元に戻りたいと考えていますが、地元には雇用が少なく就職先の幅が狭いことから、地元に帰りたくても帰れないという若い世代の声を良く聞きます。このままでは地元は衰退の一途をたどっていくことから、若い世代が地元に帰っても就職できるために、将来は地元で農業の振興や社会課題の解決に貢献したいという想いも起業の原動力になっていると思います。
-事業立ち上げの経緯を教えてください。
法人登記を行った2018年当初は在学中で、人工衛星のリモートセンシングを活用して水稲の収穫適期を予測する研究をしていました。この技術が普及すれば農機のシェアリングがもっと効率よく展開できると思い、当初は農機のシェアリングビジネスにチャレンジしていました。
例えば、同じ地域内の水稲でも収穫適期を1日単位で見える化できれば、収穫時期に合わせて農業者の間で農機をシェアすることが可能となり、生産コストの低減に寄与できると考えていました。
一方、地域の農業者にご意見を伺ったところ、「農機のシェアリングも必要だが、故障や保険などの対応が大変かもしれない。また、収穫期の労働力も足りておらず困っている」など、様々なニーズがあることが分かりました。多くの農業者と意見交換する過程で、農業労働力のシェアリングビジネスという構想に発展しました。
-その当時のシェアリングビジネスはどのようなイメージでしたか。
当初は、繁忙期の労働力ニーズを補填するための人材をシェアするイメージで進めていました。
例えば、果樹農業者であれば摘果や葉落としの時期だけ人材が必要で、通年での雇用は人件費がかかり増しになります。このギャップを解消するため、人手が必要な時だけ雇用したい農業者と、地域の人たちをマッチングするサービスの運営をしていました。
ただ、長くても2週間くらいの派遣が基本となり、農業者からは「慣れてきた頃に帰られて残念」、「毎回違う人が来て、教える手間がかかる」といった意見もありました。
この事業は、農業体験による農業関係人口の増加といった価値はありますが、自分が本来やりたかったのは「農業者のためのビジネス」であり、このサービスは本当に農業者のためになっているだろうかと悩みました。結局、農業の人手不足解消という事業本来の目的とは乖離があると感じ、現在このサービスはストップしています。
■シェアリングの新たな展開を見据えて
-今回のコロナによる影響をどのように見ていますか?
コロナにより、外国人技能実習生が入国できず農業者の人手不足が深刻な実態を踏まえ、人手が余っている観光業の人材とのマッチングを行いました。今後も二週間程度で農繁期が終わる作業などへの需要があれば、マッチングは引き続き行っていきたいと思います。
また、全国の状況を見ると、3,000名もの他業種の方が新たに産地に入って農作業を行っています。捉え方によっては、コロナで農業に関わる人材が3,000名増えたとも言えるので、ポジティブに捉えられる面もあるのではないかと思います。
飲食業や宿泊業など他業種の方が短期間農作業に従事するやり方は、業界間の人材シェアリングともいえます。例えば、本業が繁忙期の時は本業に専念し、閑散期に農業の繁忙期が重なれば農業に従事するという国内の人材シェアの流れは広がっていくと思いますし、そうした事業展開も行っていきたいと考えています。
※特定技能:深刻化する人手不足に対応するため、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を受け入れる制度。農林水産省の所管では4分野(農業、漁業、飲食料品製造業、外食業)で受け入れることとしています。
農山漁村の活性化に向けて、地域資源を活用した起業者を支援するイナカム。井出さんのように、地域課題を解決するために新たなチャレンジをする方々と結びつけるプラットフォームを運用しておりますので、ご関心のある方は是非アクセスして下さい。
MAFFアプリでは、ビジネスモデルからは把握しづらい起業者の想いやビジョンを広く知っていただくために、INACOME参加起業者のインタビュー記事を掲載します。
今回は、本年2月のINACOMEビジネスコンテストにおいて、「シェアグリ~農家と働き手の短期マッチング、農業の人出不足解消~」をプレゼンした(株)シェアグリの代表取締役CEO・井出飛悠人さんにお話を伺いました。
■「シェアリング」の大きな可能性
-現在の事業概要を教えてください。
農業分野で特定技能※の在留資格を得た外国人(以下、特定技能外国人)を直接雇用し、農繁期の短期的な人手を必要としている農業者に対して、必要な期間に必要な人数だけ特定技能外国人を派遣するビジネスを展開しています。
特定技能外国人は既に農業の経験があり、日本語も多少は話せることから、農業者も一から教える必要がありません。さらに、特定技能外国人は5年の在留期間があるので、例えば葉物野菜を生産する農業者だと、長野→茨城、群馬→千葉といったように、繁忙期がずれる地域で同じ人が回りながら作業するような仕組みを構築することを目指しています。
そうすることで、来年・再来年も同じ特定技能外国人が来てくれて、農業者は同じ作業を何度も教える必要がなく効率的に作業ができ、信頼関係を築くことができます。産地間で人材のシェアリングを行うことで人件費も節約でき、農業者にとって大きなメリットになります。
-どのような農業者に利用されていますか?
比較的大規模な農業者で、農繁期と農閑期の差が大きい果樹や葉物などの農業者に特に利用されています。また、過去に特定技能外国人の受け入れ経験があれば、宿泊施設等を整備していることが多く、特定技能外国人の滞在にも対応できるので、よりスムーズにご利用いただけると思います。
■ミッションは「農業の人手不足解消」
-元々起業に関心をお持ちだったのですか?
長野県佐久市の生まれで、実家が種苗会社を営んでいたこともあり、元々経営に関心はありました。
また、将来は地元に戻りたいと考えていますが、地元には雇用が少なく就職先の幅が狭いことから、地元に帰りたくても帰れないという若い世代の声を良く聞きます。このままでは地元は衰退の一途をたどっていくことから、若い世代が地元に帰っても就職できるために、将来は地元で農業の振興や社会課題の解決に貢献したいという想いも起業の原動力になっていると思います。
-事業立ち上げの経緯を教えてください。
法人登記を行った2018年当初は在学中で、人工衛星のリモートセンシングを活用して水稲の収穫適期を予測する研究をしていました。この技術が普及すれば農機のシェアリングがもっと効率よく展開できると思い、当初は農機のシェアリングビジネスにチャレンジしていました。
例えば、同じ地域内の水稲でも収穫適期を1日単位で見える化できれば、収穫時期に合わせて農業者の間で農機をシェアすることが可能となり、生産コストの低減に寄与できると考えていました。
一方、地域の農業者にご意見を伺ったところ、「農機のシェアリングも必要だが、故障や保険などの対応が大変かもしれない。また、収穫期の労働力も足りておらず困っている」など、様々なニーズがあることが分かりました。多くの農業者と意見交換する過程で、農業労働力のシェアリングビジネスという構想に発展しました。
-その当時のシェアリングビジネスはどのようなイメージでしたか。
当初は、繁忙期の労働力ニーズを補填するための人材をシェアするイメージで進めていました。
例えば、果樹農業者であれば摘果や葉落としの時期だけ人材が必要で、通年での雇用は人件費がかかり増しになります。このギャップを解消するため、人手が必要な時だけ雇用したい農業者と、地域の人たちをマッチングするサービスの運営をしていました。
ただ、長くても2週間くらいの派遣が基本となり、農業者からは「慣れてきた頃に帰られて残念」、「毎回違う人が来て、教える手間がかかる」といった意見もありました。
この事業は、農業体験による農業関係人口の増加といった価値はありますが、自分が本来やりたかったのは「農業者のためのビジネス」であり、このサービスは本当に農業者のためになっているだろうかと悩みました。結局、農業の人手不足解消という事業本来の目的とは乖離があると感じ、現在このサービスはストップしています。
■シェアリングの新たな展開を見据えて
-今回のコロナによる影響をどのように見ていますか?
コロナにより、外国人技能実習生が入国できず農業者の人手不足が深刻な実態を踏まえ、人手が余っている観光業の人材とのマッチングを行いました。今後も二週間程度で農繁期が終わる作業などへの需要があれば、マッチングは引き続き行っていきたいと思います。
また、全国の状況を見ると、3,000名もの他業種の方が新たに産地に入って農作業を行っています。捉え方によっては、コロナで農業に関わる人材が3,000名増えたとも言えるので、ポジティブに捉えられる面もあるのではないかと思います。
飲食業や宿泊業など他業種の方が短期間農作業に従事するやり方は、業界間の人材シェアリングともいえます。例えば、本業が繁忙期の時は本業に専念し、閑散期に農業の繁忙期が重なれば農業に従事するという国内の人材シェアの流れは広がっていくと思いますし、そうした事業展開も行っていきたいと考えています。
※特定技能:深刻化する人手不足に対応するため、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を受け入れる制度。農林水産省の所管では4分野(農業、漁業、飲食料品製造業、外食業)で受け入れることとしています。
農山漁村の活性化に向けて、地域資源を活用した起業者を支援するイナカム。井出さんのように、地域課題を解決するために新たなチャレンジをする方々と結びつけるプラットフォームを運用しておりますので、ご関心のある方は是非アクセスして下さい。
参考記事
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情報元: 農林水産省
この記事は、農林水産省政策情報API を利用して取得した情報をもとに作成していますが
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