営農・栽培技術
大豆の栽培ポイント ~栽培に役立つ機械を紹介~
国産大豆の需給の高まりを受け、大豆の作付増進に向けた取組みが進んでおり、主に水田を活用して水稲から大豆に転作する栽培手法が取り入れられています。水田転作におけるポイントをまとめました。
大豆は味噌や豆腐の原料となり、国内での消費量が多い作物ですが、原料となる大豆は海外からの輸入が大部分を占めています。最近では国内でも水田利活用の一環として、大豆の作付が広がっています。大豆の栽培ポイントは、排水不良による苗立ち不良を防ぐことや、根、根粒菌など土壌環境を整えることです。農業機械による圃場整備や土壌改良が効果的です。大豆は主に6月~11月に栽培されます。栽培前の圃場整備は水稲作業と重なる時期です。適期播種が行えるよう計画的に作業を進めましょう。
圃場整備
大豆は発芽時や発芽直後の湿害に弱く排水性の悪い圃場では、発芽不良や根腐れを起こし生育不良の原因となります。水田からの転換畑では、排水対策をとり雨水が圃場内に停滞しない環境づくりをしましょう。
圃場の選択
本暗渠がしっかりしているなど、できるだけ排水性の高い圃場を選びましょう。次のような圃場では栽培が困難です。
- ロータリ耕が困難なほどの湿田
- 地下水位が高い圃場
- 周囲から水が集まりやすい低地の圃場
- 水田と隣接する圃場(畦畔から水が流入しやすい)
排水不良の例
明渠施工
圃場の周囲に明渠を施工して、隣接する水田や用水路から水の流入を防止しましょう。明渠は、降雨等によって生じた土壌の表面水を速やかに除き、湿害を防止する効果があります。
明渠施工の例 トラクタ+溝堀機
暗渠施工
補助暗渠として弾丸暗渠を施工することで、本暗渠の効果を高め、圃場の排水性が向上します。弾丸暗渠の施工にサブソイラ等を用いると、湿害の原因となる硬盤を破砕し、水の縦浸透が良くなります。硬盤破砕は乾田化を促進し、大豆の生育環境を良好にする効果があります。
土づくり・施肥
大豆で安定した収量を得るためには、土壌の地力を高めることが重要です。また、生育期が6~9月にあたるため、高温に負けないように大豆が根を張れる作土層の確保が重要です。
土づくり
水田転作の場合、作土層が15㎝程度と浅く、大豆が十分に根を張れないことがあります。プラウ等の深耕作業機を用いて25㎝以上の耕耘を行い、大豆の根が十分に張れる作土層を確保しましょう。
スタブルカルチによる深耕作業
堆肥等の有機物資材散布の様子
大豆の根に共生する根粒菌は、空気中の窒素を固定し大豆の根に窒素を供給する働きがあります。高温乾燥・湿害や、腐植の少ない土壌条件では根粒菌の活性が下がり大豆の収量が不安定になることが分かっています。堆肥や緑肥など有機質を投入し、土壌の腐植や三相条件(空気、水、土)を高めるような準備をしましょう。堆肥は完熟したものでないと、家畜飼料に混入した雑草種子が発芽する場合があるため、完熟堆肥の施用が望ましいです。
セミクローラトラクタ
セミクローラは強い駆動力があるため、負荷の大きい深耕作業にぴったりです。また、接地圧が小さく、ホイルに比べ湿った圃場に早く入ることができ、圃場を傷めにくく作業を計画的に進めやすくなります。
施肥
施肥基準に沿って施肥します。大豆は地力窒素や根に共生する根粒菌から大部分の窒素分を得ます。過剰施肥は根粒菌の活性阻害や病害虫被害を助長するため、土壌診断を行い適切な施肥を心がけましょう。
肥料散布の様子
大豆の根に付着した根粒
マップ連動可変施肥(BFシリーズZ型)
BFトラクタのZ型はマップ連動可変施肥対応の施肥機と組み合わせることで、マップ連動可変施肥を行うことが出来ます。地力に応じた施肥を行うことができ、効率的な施肥や生育の均一化につながります。
マップ連動可変施肥とは
ザルビオⓇフィールドマネージャーで、作付け前に圃場の地力をセンシング・マップデータ化しておき、そのセンシングデータを基にトラクタが施肥量を自動で制御します。
マップ連動可変施肥の様子(写真は小麦追肥での事例)
大豆の土壌好適pHは6.0~6.5です。土壌pHは作物の土壌養分吸収や病害虫の発生に関係しています。土壌が好適pHになるよう資材を散布し調整しましょう。
pH測定のための土壌サンプル様子
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播種
水田転換畑では湿害を避けるためうねたて同時播種ができます。うねを立てるとことで水はけは良くなりますが、天候によっては過乾燥になり発芽不良になる場合があります。過乾燥になりそうな場所ではうねを立てず、平床で播種することも考えましょう。
種子消毒
大豆で発生する病害は種子由来のものが多くあります。生育期間中の病害罹患を防ぐためには種子消毒が有効です。播種前に薬剤と種子を混合し種子塗布します。
種子消毒の様子
大豆種子由来の病害(ダイズ紫斑病)
播種
大豆の発芽~苗立ちが安定するためには、土壌の水分条件が重要です。土が黒く適度に水分を含んでいる土壌条件が発芽に適しています。基本の播種深度は3㎝程度ですが、晴天が続き過乾燥の時は播種深度はやや深め(5㎝程度)にするようにしましょう。
また、一般的な栽植密度は10,000~15,000本/10aです。出芽率が高い場合は2粒播き、圃場条件などで出芽率が低く不安定な場合は3~4粒播きを検討しましょう。
アップカットロータリによる耕耘畝たて同時播種
汎用播種機による高速播種
直進アシスト仕様(BFシリーズZ型)
BFトラクタのZ型は直進アシスト機能が装備されています。基準線を取得し、直進アシスト入にすることで、自動でまっすぐ進むようステアリングが制御されます。まっすぐ播種されることで、中耕培土の作業がしやすくなります。
直進アシストで播種したうね。中耕培土で作物を傷つけにくくなる。
中耕培土・防除
大豆の管理作業は適期作業が重要です。日々、生育状況を把握しながら計画しましょう。また、都道府県等が発信している生育速報は管理作業の目安を知るために役立ちます。都道府県のHP等で公開されています。
中耕培土
土を撹拌することで大豆が適度に断根し、新しい根が増え生育が良くなる効果があります。また株元に土寄せすることで倒伏を低減します。
条間に発生する雑草を抑制する効果もあります。中耕培土のやり方は下図の通り、大豆の生育に合わせて2回実施します。土壌が過乾燥の場合中耕培土による大豆の断根は生育不良につながる場合もあります。気象条件や土壌条件に合わせて実施しましょう。
中耕培土実施時期の目安
中耕除草機H3-200による中耕培土作業
高速で中耕除草(中耕除草機 エコ草取りくん)
作業速度4~6km/hの高速で中耕培土を行うことが出来ます。能率的にうね間の除草作業を行うことができ、除草剤の使用を制限した環境保全型農業で注目されています。
防除
雑草発生は養分競合により大豆の生育にも影響します。除草剤の適期散布や中耕培土を行い防除をしましょう。また、アサガオ類は防除の難しい雑草です。アサガオ類が多い場合は一度水田に戻す等、抜本的な対策が必要となります。
病害虫の発生により生育阻害や、汚粒の発生につながります。農薬の散布の他、圃場周辺の雑草防除を行い、圃場内に害虫が定着しない環境づくりを心がけましょう。
難防除雑草のアサガオ類繁茂の様子
吊り下げノズルによる病害虫防除の様子
カラー液晶モニタ(乗用管理機 JKZ23)
車速、散布設定を表示するカラー液晶モニタが装備されています。カラー液晶になることで、散布状況が確認しやすくなりました。自動散布設定では10aあたりの散布量を設定することで、車速に応じて自動で流量が制御され簡単に防除作業が行えます。(ノズル種類によっては散布量に違いがある場合があります。)
収穫
収穫
適期収穫を心がけよう!
大豆の収穫適期は葉期のポイントに着目して見極めてください。
- 葉が全て落ちて7~10日。
- 葉の緑色が無くなり、株全体が茶色になる。
- 全体的に乾燥して、枝が音を立てて折れる。
- 莢を振るとカラカラと音がする。
大豆コンバイン
ヰセキでは大豆コンバインHC405をラインナップしています。大豆を傷つけないコンプレッサー搬出のエアーグレン、距離のあるコンテナへ簡単に搬出できるズームオーガなどヰセキオンリーの装備を搭載しております。
大豆の栽培技術普及の状況
水田を利用した大豆栽培では、播種時の湿害による発芽不良が反収・品質の低下原因として問題視されていました。この問題を解決するために、(独)農業・食品産業技術総合研究機構が開発した耕起・播種技術が「大豆300A技術」です。ちなみに「300A」とは、「反収300㎏、品質Aクラスの生産を実現する」という意味です。地域の気象条件や土壌条件に応じて様々な栽培体系があります。
耕耘同時畦立て播種技術
湿害の影響が大きい排水性に劣る圃場でおすすめ
アップカットロータリの爪配列を図のように変え、逆転耕により耕耘・砕土しながら畦成型し、施肥・播種を同時に行う技術です。畦の高い部分に播種されるため、湿害が軽減されるほか、出芽以降の生育が良好で、収量の安定が期待できます。
また、中耕培土による除草作業を行えるため、除草剤を使用しない有機栽培では雑草対策を行いやすい栽培技術です。
高速畝たて播種技術
トラクタで牽引しうねを立てながら車速4~6km/hで播種作業します。大豆の生産量向上に向け開発された栽培技術で、高速作業で能率性の高さと、うねたてによる湿害対策を両立した技術です。
高速畝立てディスクHDR200(小橋工業) + 播種機HUD-2(アグリテクノサーチ)
狭畦密植栽培技術
大豆で問題になる雑草へのアプローチとして行われている栽培方法です。うね間のピッチを30㎝と短くすることで、大豆自体で日陰を作り雑草の生育を抑える栽培方法です。中耕培土は行わないため省力的ですが、その反面、倒伏耐性や湿害等は中耕培土を行う体系に比べ劣る場合があります。また、中耕培土による除草を行わないため苗立ちが失敗した場合、雑草が繁茂すると除草剤頼みになります。