井関農機株式会社

営農・栽培技術

みんなに知ってほしい、「疎植栽培稲の力」

株間を広げて植えることで稲が丈夫に!!

水稲の低コスト栽培技術のひとつである「疎植栽培」。疎植栽培では、株間を広くとることで稲の生育環境が非常に良くなり、その結果、健康で丈夫な稲に育ちます。

疎植栽培で育てた稲は、次のような特長を持ちます。

Ⅰ. 倒伏に強い

疎植栽培の稲は、田植え後しばらくはまばらで寂しいですが、生育が旺盛で茎がタバコ程度まで太く丈夫に成長し、倒伏に強くなります。

Ⅱ. 光合成能力が高い

疎植栽培の稲は、隣の株との間隔が広いため、開帳型(V字型)に株が張っていきます。このため、より株元の葉まで光を受けることができ、稲の光合成能力が高くなります。

Ⅲ. 病気に強い

株間が広いことで、縦横に風が抜けやすく湿気がこもりにくい環境となるため、湿気が発生要因となる病気(いもち病、紋枯病等)の発生軽減が期待できます。

Ⅳ. 穂が大きくなる

疎植栽培を行うと、太くなった茎内で穂に養分や水分を運ぶ維管束が生育後期までしっかり働き、籾数の多い大きな穂をつけます。

管理の基本は同じ、疎植ならではのポイントをおさえよう!

疎植栽培は決して難しい栽培技術ではありません。管理の基本は従来の慣行栽培と同じです。疎植ならではのポイントをおさえて、疎植栽培にトライしてみましょう!

Point1. 植付本数は3~5本(寒冷地では4~6本)

疎植栽培ではほ場に植える苗が少ないため、収量確保の心配から、植付本数をつい多くしてしまいがちです。しかし、疎植栽培では植付本数を増やさなくても、慣行栽培と同等の収量が確保できます。植付本数が増えれば、使用箱枚数が増加するだけでなく、倒伏や病気の原因となるなど、マイナス面が大きくなることがありますので注意しましょう。

Point2. 軽い中干しで生育を調整

疎植栽培の稲は分げつが旺盛なので、中干しによって生育を調整してあげましょう。中干しの時期は、目標穂数の8割程度の茎数を確保した頃が目安です。(疎植茎数指標はこちら →日本各地の疎植栽培暦
土の表面に軽くひびが入る程度の中干しが最も効果的です。ひびが深く入りすぎると、登熟期間に重要な働きをする「うわ根」を切ってしまう恐れがあるので注意しましょう。

中干し適期の稲の様子
土の表面に軽くひびが入る程度に
Point3. 葉色が濃くても穂肥の施肥量はしっかりと

疎植栽培だからといって、窒素の総投入量を変える必要はありません。慣行栽培と同等の窒素量を施肥してください。また、疎植の稲は葉色が濃いので穂肥を控えてしまいがちですが、稲の活力を維持するためには慣行と同等の施肥量が必要です。

最高分げつ期のコシヒカリ/37株のほうがやや濃く見える
Point4. 早刈りは禁物

疎植の稲は穂が大きいので、登熟するまでに時間がかかる傾向があります。収量・品質確保のためには刈取適期をしっかりと見極めましょう(早刈りは禁物)。穂の8割が熟れ色になっていれば刈取適期です。

刈取適期の判断目安

稲は健康で丈夫に、収量も落とさずコストの削減や作付面積拡大への対応がかなう「疎植栽培」。皆さんもぜひ試してみませんか?

日本各地の疎植栽培暦

井関グループでは、日本各地の土地・品種に適した栽培技術を確立するために、疎植栽培体系の調査・研究を行ってきました。こうした調査結果を各県・地域の銘柄ごとに「栽培暦」としてまとめました。

疎植栽培暦
東北地区

青森/全域/まっしぐら 青森/津軽/つがるロマン 岩手/全域/あきたこまち 岩手/全域/ひとめぼれ 秋田/全域/あきたこまち 秋田/海岸平坦部/ひとめぼれ 宮城/全域/ひとめぼれ 宮城/全域/ササニシキ 山形/全域/コシヒカリ 山形/全域/ひとめぼれ 山形/全域/はえぬき 福島/会津/コシヒカリ 福島/中通り/コシヒカリ 福島/浜通り/コシヒカリ 福島/全域/ひとめぼれ 

関東地区

茨城/全域/コシヒカリ 栃木/全域/コシヒカリ 栃木/全域/なすひかり 栃木/県中南/あさひの夢 埼玉/全域/彩のかがやき 埼玉/全域/コシヒカリ 埼玉/全域/キヌヒカリ 千葉/全域/ふさこがね 千葉/全域/コシヒカリ 群馬/東部太田市/ひとめぼれ 群馬/東部館林市/コシヒカリ 群馬/中部前橋市/コシヒカリ 群馬/中部高崎市/ゴロピカリ 神奈川/全域/キヌヒカリ

甲信越地区

新潟/上越/こしいぶき 新潟/下越/こしいぶき 新潟/上越(平坦地)/コシヒカリBL 新潟/中越(魚沼)/コシヒカリBL 新潟/下越(平坦地)/コシヒカリBL 長野/全域/コシヒカリ

北陸地区

富山/砺波市/コシヒカリ 石川/全域/コシヒカリ 福井/全域/コシヒカリ  

東海地区

愛知/三河/あいちのかおり 愛知/尾張/あいちのかおり 愛知/全域/コシヒカリ 静岡/全域/あいちのかおり 静岡/全域/コシヒカリ 岐阜/西濃/ハツシモ 岐阜/山間地/コシヒカリ

関西地区

三重/早期/あきたこまち 三重/早期/みえのえみ 三重/早期/コシヒカリ 三重/晩期/コシヒカリ 三重/晩期/キヌヒカリ 三重/晩期/みえのゆめ 滋賀/全域/コシヒカリ 滋賀/全域/キヌヒカリ 滋賀/全域/秋の詩 京都/全域/コシヒカリ 京都/全域/キヌヒカリ 京都/京都・山城/ヒノヒカリ 大阪/全域/コシヒカリ 大阪/全域/キヌヒカリ 大阪/全域/ヒノヒカリ 和歌山/全域/コシヒカリ 和歌山/全域/キヌヒカリ 和歌山/紀北・紀中/ヒノヒカリ 兵庫/全域/コシヒカリ 兵庫/全域/キヌヒカリ 兵庫/南部/ヒノヒカリ 兵庫/北播・丹波/山田錦 奈良/東山間/コシヒカリ 奈良/南山間/キヌヒカリ 奈良/平坦地/ヒノヒカリ

中国地区

鳥取/全域/コシヒカリ 鳥取/全域/ひとめぼれ 島根/全域/コシヒカリ 島根/平坦地/きぬむすめ 岡山/中北部/コシヒカリ 岡山/中南部/ヒノヒカリ 岡山/南部/朝日 岡山/北部/あきたこまち 岡山/南部/アケボノ 広島/中北部/コシヒカリ 広島/南部/ヒノヒカリ 広島/中北部/あきろまん 山口/全域/コシヒカリ 山口/全域/ヒノヒカリ 山口/全域/ひとめぼれ

四国地区

香川/東讃・西讃/コシヒカリ 香川/中讃/コシヒカリ 香川/全域/ヒノヒカリ 愛媛/東・南予/コシヒカリ 愛媛/中予/コシヒカリ 愛媛/東・南予/ヒノヒカリ 愛媛/中予/ヒノヒカリ 愛媛/南予/あきたこまち 愛媛/中予/あきたこまち 徳島/小松島3月植え/コシヒカリ 徳島/小松島4月植え/コシヒカリ 徳島/小松島5月植え/コシヒカリ 徳島/南部/キヌヒカリ 徳島/北・南部/キヌヒカリ 徳島/南部/コシヒカリ 徳島/北・西部/コシヒカリ 高知/全域/コシヒカリ 高知/全域/ヒノヒカリ

九州地区

福岡/北九州/夢つくし 福岡/筑後/ヒノヒカリ 佐賀/全域/ヒノヒカリ 長崎/全域/ヒノヒカリ 長崎/全域/にこまる 熊本/全域/ヒノヒカリ 熊本/阿蘇/コシヒカリ 熊本/天草/コシヒカリ 大分/全域/ヒノヒカリ 大分/日田/ひとめぼれ 宮崎/早期/コシヒカリ 宮崎/普通/ヒノヒカリ 鹿児島/早期/コシヒカリ 鹿児島/普通/ヒノヒカリ

疎植データ集

平成24年 疎植収量調査データ

平成23年 疎植収量調査データ


※栽培地域の気温や水温、作付品種によっては茎数が増えづらく、疎植栽培に取り組むことが難しい場合があります。そのような場合でも、「密播栽培」に取り組むことでコストの削減や作付面積拡大に対応できます。

詳しくはこちら → <茎数確保が難しい地域・品種の方でも導入できる!密播栽培>

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