営農・栽培技術
密播ってどうやるの?育苗の際のポイント
水稲の低コスト栽培技術のひとつである「密播栽培 」。一箱あたりの播種量を増やし、移植時の苗かき取り量を小さくすることで、面積あたりの使用箱枚数を削減できるのが密播栽培の特長です。
そんな密播栽培ですが、栽培管理の中では特に育苗が重要になります。本ページでご紹介する育苗の際のポイントをおさえて、ぜひ密播に取り組んでみましょう。
目標とする密播苗の姿
- 育苗日数は慣行同等~少し短め
基本的に慣行苗と同じ日数でOK。その間の管理作業も慣行苗と同様です。密播苗は播種量が多い分、マット形成が早い傾向があるので、育苗期間を短くすることも可能です。
- 十分なマット強度
密播では植付時のかき取り量が少なくなるため、十分なマット強度を確保する必要があります。
植付作業に支障の出ないマット強度の目安は、両手で持っても崩れないこと、巻いた時にヒビが入らないことです。マット形成は温度管理や使用培土に影響を受けます。
- 苗丈12~15cmがベスト
長すぎても、短すぎても植付は安定しません。苗丈は湿度管理や品種の影響を受けます。伸びにくい場合、十分な苗丈を確保するまで移植を待ちましょう。
✖ こんな苗はダメ:マット強度が弱い、苗丈が短い
マット強度が弱い場合、苗タンク上で苗が崩れ、移植精度が落ちてしまいます。また、苗丈が短すぎるものは土に埋没したり、入水すると水が深い箇所で水没して枯死してしまいます。
播種計画
- 基本的に慣行苗と同じ播種計画でOK
密播苗を育苗する際も、今まで行っていた播種計画を大きく変更する必要はありません。
ただし、密播苗の性質から以下の点も考慮して播種計画を立ててください。
①密播苗はマット形成が早い傾向がある
上記の理由で、苗丈が確保できていれば慣行苗より育苗期間を短くすることも可能です。何度か育苗し、苗の仕上げを確認して慣行苗に合わせて、播種日を遅らせるのも1つの方法です。
②密播苗は老化が早い傾向がある
密播苗は慣行苗に比べ、育苗期間が長くなると苗質が低下(老化)しやすい傾向があります。1回の播種作業で播種する量は1週間程度で移植できる箱数を目安としてください。
培土・苗箱
- 苗箱は稚苗用を
ヰセキ純正苗箱は底面にシボがあり、根張りの方向が横方向に矯正されます。横方向に矯正している方が爪できれいにかき取ることができるため、移植精度がよくなります。密播(・密播疎植)では植付精度が重要になるため、育苗にはヰセキ純正苗箱がおすすめです。
密播苗では、十分なマット強度を確保する必要があるため、穴の少ない稚苗用苗箱を使用します。穴の多い中苗用しかない場合は、底面に遮根シートを張り、根をなるべく苗箱内に張らせることでマット形成を早めます。
- 培土はマット形成のよいものを
培土については、播種量の多い密播苗だからといって、肥料成分の多いものに変える必要はありません。十分なマット強度を確保する必要があるので、根張りのよいヰセキ純正培土がおすすめです。
播種作業
- 播種量は乾籾で220~250g (催芽籾で275~313g)
密播苗の播種量は苗箱あたり、乾籾220~250g程度を目安にしてください。播種には催芽籾を用います。催芽籾は水分を含むため、乾籾に比べ重量が約1.25倍となります。乾籾220gなら催芽籾で275gになるように播種機を調整しましょう。
乾籾重:種子準備量の計算に使います。
例)1,000枚播種の場合
220g×1,000枚=220kg必要
催芽籾重:播種機での播種量調整に使います。
- 試し播き
播種量は、これまでの慣行苗に比べ多めに播くことになります。播種機の目盛りはあくまで計算値です。本番の播種の前に、種子だけで必ず試し播きを行い、機械の調整を行いましょう。
- 床土は16~18mm、覆土は5~7mm
床土は16~18mm程度を目安とし、覆土は種子を十分に覆うよう、5~7mmを確保します。
酒米や飼料用米など大粒品種は千粒重が重いため、播種量(g)を多くしないと種籾数が確保できず、苗箱数が思うように減らないことがあります。
播種量を増やすと種子層が厚くなり、覆土が溢れることがありますので、その際には床土を薄くして調整しましょう。