井関農機株式会社

営農・栽培技術

乾田直播栽培のポイント

代かきをせず、乾いた田んぼに直接播種する乾田直播栽培は、スケールメリットが活かせるほ場において大幅な省力化や低コストにつながる技術です。その魅力や栽培のポイントについて解説します。

乾田直播のメリット

  • 低コスト
    乾田にまくため、種子の酸欠対策がいらず種子コーティングが不要になります。コーティングの手間や資材コストがかかりません。
  • 高効率作業が可能
    作業はトラクタ牽引式の播種機で行います。大型トラクタと播種機を組み合わせると高速で作業を行うことができ、作業時間の削減につながります。また播種機は麦や大豆等の播種に適応しているものもあり、複合経営を強化することが可能になります。
  • 移植適期より播種適期が早い
    湛水直播は本州の中間地等で移植より播種適期が遅いのに対し、乾田直播は移植より早い3~5月に播種が行われています。湛水直播も乾田直播種も移植栽培と組み合わせることで作業分散ができる点は同じですが、湛水直播を組み合わせると田植えシーズンが後ろに伸び、乾田直播を組み合わせると前に伸びます。ご自身の作業予定に照らし合わせて他の作業と被りにくい日程で行える直播体系を選びましょう。

高速播種作業

効率の良い大型の機械がほ場に入れるよう、播種前にほ場をよく乾かしておきます。

作業機はグレーンドリル等の畑作用播種機を使います。グレーンドリルでは10km/h程度の高速作業ができます。施肥・鎮圧機能も備えた機種を用いると、元肥施肥、鎮圧作業も同時に行えるため、大幅な時間短縮となります。また、大容量ホッパーを備えているので肥料、種子の補給回数が減らせ、補給作業によるロスタイムも削減できます。

点播のメリット

点播をすると株を形成しますので、倒伏に強くなり、風通しがよくなることで苗の生育もよくなります。従来の点播の播種機は高速作業ができませんでしたが、グレーンドリルに近い作業速度で高精度な点播ができる機械も登場してきており、作業効率を犠牲にすることなく倒伏を軽減することができます。

2020年の夢ある農業総合研究所での実証栽培では点播で播種したコシヒカリで、目立った倒伏もなく約540㎏/10aの収量を確保できました。

夢ある農業総合研究所での作業時間測定事例

移植       35分/10a (8条植え田植機)
乾田直播(点播) 7分/10a(8条播種機)

使用機械
・トラクタ:TJV755
・播種機:NTP-8AF(アグリテクノサーチ)

作業条件
・播種条数:8条
・条間:30㎝
・作業速度:~8km/h(播種機作業最高速)
・ほ場面積:約1ha
・ほ場長辺:145m

乾田直播は事前のほ場準備が大切

コスト削減、作業省力化につながる栽培技術ですが、安定した収量の確保には事前のほ場準備が必要になります。

  1. ~苗立ちまで
    降雨等により水没すると種子が窒息してしまい、発芽不良や苗立ち不良につながります。排水性を高め、ほ場全体を均平にしておくことが大切です。
  2. 苗立ち後~
    苗立ち後は分げつ確保のために湛水します。代かき作業を行わないため移植栽培のほ場に比べて漏水しやすいほ場となっているため、ほ場準備の際はよく砕土をおこない土壌の保水性を高め、また、あぜぬり等の畦畔整備を行い、水漏れを防ぐことが大切です。

まとめると、苗立ちまでは発芽不良、苗立ち不良を防ぐために排水性が大切です。苗立ち後は分げつ確保のために保水性が大切であり、水をコントロールしやすいバランスの取れたほ場づくりが大切になります。

ほ場準備作業

乾田直播では排水性と保水性の2つを両立することが重要です。ほ場準備はその2点を考慮して作業をしていきます。

ほ場準備は一般的には以下のように進んでいきます。

  • 耕起 (プラウ、スタブルカルチ等)
    前作の残渣は残しておくと均平作業や播種作業の妨げとなるため、残渣をすきこむことが重要です。また、心土破砕効果により下層土を砕くため透排水性を向上させる効果があります。トラクタでの作業性を良くするためにも反転し土を乾かしておくことが大切です。
  • 整地 (パワーハロー)
    耕起した土を整地し均平作業がしやすいよう整地を行います。パワーハロー等により、よく砕土、鎮圧をすることで土の保水性を高め種子が発芽しやすい土質にします。
  • 均平 (レーザーレベラー、GPSレベラー)
    ほ場の均平作業を行います。高低差は10㎝以内に収めます。
    均平することにより……
    ・入水時に水面を一定に保てるので苗立ちが揃います。
    ・入水後の除草剤の効果を均一にします。
  • あぜぬり (あぜぬり機)
    湛水時に漏水しないようあぜぬりを行います。代かきを行わないため畦畔部から漏水しやすくなっているのでしっかりとあぜぬりすることが重要です。また、あぜぬり機で起こされたあぜ際の土をトラクタのホイールで鎮圧しておくことも漏水対策に有効です。

その他 栽培の特徴

乾田直播は栽培初期に乾田状態を保つため、ほ場準備、播種、水管理以外にも移植栽培との相違点があります。

除草のポイント

早い時期に発生した雑草は大きく生育し被害も大きくなりますので、乾田期(苗立ち前)の雑草防除がとても大切です。

乾田期に2回除草剤を散布します。発芽前または発芽後の早期に1回、入水(湛水管理)時期が近づいてから1回行い、入水時に草が生えていないようしっかり除草します。

入水後は移植栽培と同じように除草剤を使用し雑草防除を行います。

※除草剤の施用に際しては、ラベルに書いてある使用条件(乾田、湛水や降雨の有無など)をよく確認してください。

施肥のポイント

播種後から発芽まで乾田状態を保つため湛水直播や移植栽培に比べて、土壌に元からある窒素成分の無機化が遅れるので、土壌からの窒素供給量が低下する傾向があります。また、乾田期に基肥中の即効性の窒素成分が脱窒・流亡しやすいので乾田直播向けの専用肥料を利用し、移植栽培や湛水直播より施肥量を増量すると収量を確保しやすくなります。

※施肥、防除は地域により異なる場合があります。地域の指針に従って下さい。

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