営農・栽培技術
面積拡大にお悩みのあなた、直播にトライ!
「直播」とは文字通り「種籾を直接ほ場に播く」栽培技術です。育苗の工程がないため、通常の移植栽培と比べて作業の省力化が期待でき、規模拡大にともなう労力不足を補うことができる技術です。
就農人口の減少により地域の担い手農家への農地集約が進む今日、少人数で大面積を経営するケースが増えています。こうしたケースにおいて、直播栽培を導入し従来の移植栽培と組み合わせれば、より効率的な水稲経営を展開することができます。
直播栽培における主なメリット
育苗の工程がないため通常の移植栽培と比べて作業の省力化が期待できるなど、その導入効果から主に下記のメリットが評価されています。
- 春作業の労働負荷軽減
- 作期の分散
- 育苗が不要
これらにより人手を増やすことなく作付け面積の拡大が可能になります。
春作業の労働負荷軽減
直播栽培に取り組むことにより、水稲農家にとって負担の大きい育苗作業や田植え時の苗運びなどの労働負荷が軽減でき、女性や高齢な方の体力的なハンディを補う効果もあります。また、苗の運搬・供給が不要なので補助者無しでの播種作業も可能になります。
作期の分散
移植栽培に直播栽培を組み合わせることで作期が分散でき、年々拡大する経営面積に対応することができます。
作業ピークをなだらかに
短期間に集中しがちな農作業のピークがなだらかになり、限られた人数でより多くの面積を対応することが可能になります。
春・秋のシーズンを長期化
早生から晩生まで複数品種を導入できるので、オペレータの稼働日数をより長く確保することができます。これにより、農業機械の稼働率向上も見込めます。
育苗が不要
苗を用意せずに栽培面積を拡大できます。
面積拡大に伴う育苗ハウス不足の解消や、育苗資材コストの削減につながります。
田植え前の作業の中でも播種作業は、播種後の重い苗箱の移動も含め労力のかかる作業です。直播栽培は育苗不要なので播種作業が増えません。播種がほ場準備作業のタイミングと重なってしまうため播種できる枚数に限りがある場合でも、無理なく面積拡大を行えます。
移植栽培との組み合わせがオススメ
直播栽培は「適した気候」「適したほ場」「品種の選択」や「水管理」など、移植栽培とは異なる栽培知識や栽培技術が求められます。
また、栽培初期の気象条件の影響を受けやすく、発芽・苗立ち不良や雑草繁茂による収量減、直播に適した新しい品種を導入することによるコンタミ(品種の混合)などのリスクもあります。
こうした特性を理解したうえでISEKIでは、移植栽培と直播栽培を組み合わせた営農体系をオススメしています。
乾田直播と湛水直播
直播には大きく分けて湿田状態で播種を行う湛水直播と田んぼが乾いた状態で播種を行う乾田直播があり、それぞれに以下のような特徴があります。
乾田直播
乾田直播は播種作業の高速化と栽培の低コスト化が図れるといったメリットがあります。
ほ場の準備や播種に大型の機械を使用するため、導入した機械を大豆や小麦など他の作物にも活用できる複合経営をされている方にオススメです。
湛水直播
湛水直播は田植機を直播と移植で共用できるので水稲中心の経営をされている方にオススメです。
播種時にほ場を乾かさなくて良いので、降雨が多い地域でも導入しやすい技術です。
経営形態別の湛水直播シミュレーション
シミュレーション① 中規模 家族経営 水稲 5ha
面積が増えても家族だけでは対応できない…
「農地を2haほどを任せたい」って依頼があるんだけど、ウチは家族だけでやっているから、今より面積を増やすのはきついなぁ。人を雇う以外に何か方法はないかな?
増えた2haと既存の5haのうち1haを直播栽培にしてみたら…
育苗枚数が減って無理なくやれそう!
直播のコーティング作業は育苗作業ほど手間がかからないし、面積は増えたけれど、育苗枚数が減って家族だけでも無理なくやれそうだね。
播種作業は移植作業ほど補助者の負担にならないから、女房も「面積が増えたのに体が楽になった」って喜んでるよ。
シミュレーション② 大規模経営 水稲 30ha
作業が短期間に集中するから体に応える…
田植えと収穫が短期間に集中するから忙しさが体に応えるんですよ。だからといって新しい品種を入れるとコンタミが不安だし…
品種を変えずに作期分散できるやり方はありませんかね?
30haのうち6haを直播にしてみたら…
作業ピークがゆるやかになって体が楽だね!
移植と直播を組み合わせた作業体系にしてみたら、同じ品種でも作期がずれて、短期間に集中していた作業ピークが緩やかになりました。
体もずいぶん楽になりましたよ。これなら、ウチのように限られた人数でも、もう少し面積が増やせるかもしれませんね。
シミュレーション③ 法人・集落営農 水稲 50ha
人も機械ももっと効率よく活用できたらいいのに…
せっかく機械もオペレータも揃っているのに、田植えと収穫シーズンが短いからもてあましちゃうんだよね。
もっと人を有効に活用できて、なおかつ機械の稼働率を上げられたら、今後の面積拡大にも対応できるのになぁ…。
60haに増やして20haを直播栽培にしてみたら
オペレータと機械の稼働日数が増えた!
直播と移植を組み合わせて春作業と収穫シーズンが長期化したから、オペレータと機械の稼働日数が増えて、経営効率が良くなったね。
面積が10ha増えても充分に対応できたよ。
シミュレーション④ 米・野菜複合経営 水稲 40ha 野菜 5ha
育苗ハウスが足りないし、苗購入は増やしたくないし…
地区一番の農家をめざして面積を増やしてきたけれど育苗ハウスが足りなくて、10ha分は苗を購入しています。
これ以上ハウスを建てる場所はないし苗購入を増やせば生産コストが上がってしまうし、現状より面積を増やすのは無理なのかな。
苗購入していた10ha分をすべて直播栽培にしてみたら
現状の育苗ハウス棟数で規模拡大が可能に!
当面、面積が増える分は直播で作付けすれば育苗ハウスは現状の棟数のままでも面積を増やすことができそうです。
10ha分を直播に切り替えて余裕ができたから、野菜の品目も増やしてみたいですね。
移植+直播の省力経営ならこの一台!
さなえの多目的仕様は、作業機を付け替えるだけで移植作業も直播作業もこなしてしまう便利な一台です!作業機の付け替えも簡単で、忙しい田植えシーズンでも手間暇かけずに脱着できます。
また、現在お使いの田植機もオプションキットを購入し組み替えることにより、多目的仕様に変更できます。(PRJ8、PR6のみ ※一部型式除く)
インタビュー
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- 夢総研のサポートで直播に対する不安が払拭できました
- 奈良県奈良市都祁白石町
福光園 福井 周一さま
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- 作期の拡大が直播をやっている最大のメリットです
- 福島県大沼郡会津美里町
有限会社ごんべい 大竹 久一さま
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- 人をバランス良く配置するために直播を取り入れたいですね
- 兵庫県小野市
農事組合法人きすみの営農 藤本 弘文さま
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- 直播に適した品種って何だろう?
- 直播に適した品種の育成について、九州の研究者の方に解説していただきました。