スマート農業
アイガモロボ – IGAM2の活用ガイド
第2世代のアイガモロボ(IGAM2)の上手な使い方を詳しくご紹介します。ロボットの抑草効果を最大限に発揮させ、効果的な雑草対策を実現しましょう!
基本の使い方
基本の使い方は従来モデルのIGAM1と変わりません。アイガモロボの運用に適したほ場環境や苗を用意して、田植え後の3~5週間、ほ場に浮かべて使用します。
投入後は、ロボットが縦横無尽に航行しながら水を濁らせることで、雑草が光合成をしにくいほ場環境を作り、雑草の生育を抑制します。
アイガモロボ(IGAM2)の活用ポイント
アイガモロボは、適切な準備と最適な使用方法によって、その抑草性能を最大限に発揮します。
ここでは、IGAM2の効果的な運用のために押さえるべき事前準備や使用時のポイントについて、詳しく解説します。
- 運用前の事前確認・準備
事前の準備や必要な調整を行い、万全の状態で運用を始めましょう。 - 使用する際のポイント
適切なタイミングと方法で運用することで、効果的な抑草が可能になります。
効率よく運用して効果的な雑草対策を実現しましょう!
運用前の事前確認・準備
アイガモロボを使用する前には、適切な準備をしっかりと整えることが大切です。以下のポイントを押さえ、万全の体制で運用をスタートしましょう。
アイガモロボに適した田んぼ
● 水管理が容易
アイガモロボの効果を最大限に発揮するためには、水管理がしやすく、稼働期間中に水位を一定に保てる田んぼを選ぶことが重要です。
水の供給が不安定であったり、あぜが低かったり、水はけが良すぎる場所は、アイガモロボの運用に適していません。
適切な水管理ができる環境を整えることが、アイガモロボを快適に利用するための第一歩です。
推奨水位:5~10cm
● 田んぼの土質
抑草効果を安定させるためにも、アイガモロボに適した土質の田んぼを選定することが重要です。土が適度にやわらかく、水のにごりが継続する土質の田んぼで抑草効果を発揮しやすい特性があります。一方で、砂質などにごりが発生しにくい土質では、十分な抑草効果が得られない場合があります。
● GPS受信状況
アイガモロボは航行にGPS位置情報を利用するため、電波が届きにくい場所では正常に稼働できない可能性があります。このような場所では、航行開始ができなかったり、稼働中に停止してしまうことがありますので、使用する田んぼ付近に十分なGPS信号が確保できるかを事前に確認しておきましょう。
運用前の準備
● 育苗のポイント
アイガモロボは苗を倒しながら航行しますが、苗質が良い場合はロボット通過後に倒れた苗が自然に起き上がります。一方で、軟弱徒長気味の苗は倒れたままになることが多く、生育不良を引き起こす可能性があります。
また、稼働期間中は水位を5~10cmに設定することを推奨しています。この水位を維持した際、苗の草丈が十分でないと苗が水没し、生育に悪影響を及ぼすことがあります。
育苗期には水管理や温度管理を徹底し、徒長を防ぎながら丈夫で健全な苗を準備しましょう。
● ほ場の均平
推進機構をブラシ方式に変更したことで、IGAM2は従来モデルに比べて大幅に走破性が向上しており、部分的な浅瀬であれば乗り越えることが可能になっています。
ただし、ロボットの底面が田面に接触し続けるような状態では、航行不能になる可能性があります。そのため、水を5cm程度入れた後に田面が露出しない程度の均平を確保しておくことが重要です。
均平が取れていることで、ロボットの航行がスムーズになります。また、部分的な苗の水没も防ぐこともできますので、ほ場の状態を確認し、必要に応じて整備を行いましょう。
使用する際のポイント
アイガモロボを効果的に活用するための重要なポイントを押さえ、最大限の成果を目指しましょう。
投入時期と初期チェック
田植え3~5日後を目安に、苗が活着してから投入してください。
活着から投入まで日数が空きすぎてしまうと、アイガモロボが稼働する前に雑草の生育が進んでしてしまうため、活着後はすみやかに投入しましょう。
また、活着する前に稼働させると生育が妨げられる可能性があるため、早すぎる投入も厳禁です。
適切なタイミングで使用開始することが、成功に繋がります。
[ISEKIが検証] 投入時期が早すぎるとどうなる?
苗が活着した後の投入が推奨のIGAM2を、苗の活着前に投入した場合はどうなるのでしょう? そこでISEKIでは、2枚のほ場を用意し、片方は推奨通りの活着後に投入、もう片方は推奨外の活着前に投入して試験してみました。
ロボット投入から7日後の苗の様子を比較してみたところ、活着後に投入したほ場では苗が元気に成長しており、問題は見られませんでした。一方、活着前に投入したほ場では苗が倒れ、色づきも悪くなっている状況でした。
この結果からも分かるように、投入は苗が活着した後に行うことが重要です。みなさんも適切な投入タイミングを守りましょう!
● 代かきから田植えまで期間が空く場合
代かきから田植えまでに3日以上空く場合、土の表面が硬くなることがあります。土が硬くなりすぎると、ブラシが十分に土を巻き上げることができずに、水のにごりが少なくなり、抑草効果が低下する可能性があります。
そのため、期間が空く場合は、代かきから田植えの間にもアイガモロボを稼働させ、土が柔らかい状態を保ちましょう。その後は、田植え時に一度引き上げ、適切なタイミングで再投入してください。
● 行かせたくないエリアを回避する
IGAM2には、ロボットが航行しないエリアを指定できる「侵入禁止エリア設定」機能があり、鉄塔などの障害物を避けて航行させることが可能です。この機能を利用して、投入時に回避したいエリアを設定しましょう。
また、ロボットが航行不能になる「スタック」状態が発生しやすい場所を回避する際にも、この機能が役立ちます。現在スタックする場所であっても、水位を上げることで航行が可能になる場合がありますが、水位が回復するまでの間はスタック状態が続くため、一時的にこの機能で当該エリアを回避する設定を行いましょう。
そのため、投入当日はロボットの動作を観察しながら、スタックしている場所や水位が低く動きが緩慢になっている地点を確認することをおすすめします。
水位が十分に回復した後は、設定を解除して再び航行可能にしてください。
推奨の稼働時間
1日あたりの稼働時間は「2時間以内/10a」が推奨です。
例えば、面積が30aのほ場でIGAM2を稼働させる場合は、1日「6時間」が目安になります。ただし、苗にダメージが見られた場合は適宜時間を減らしていってください。
IGAM2は、15分単位で稼働時間を指定できるタイマー設定機能を備えています。長時間の稼働は生育を妨げる可能性がありますので、面積にあわせて必ず稼働時間を調整してください。
また、夜間は雑草が光合成することがなく、ロボットも太陽光での発電ができないため、50aを超えるほ場で稼働させる場合でも1日あたりの総稼働時間は「最大10時間」が推奨です。
[ISEKIが検証] 稼働時間を伸ばすとどうなる?
2時間以内/10aを超えてアイガモロボを稼働させた場合はどうなるのでしょう? ISEKIで試験してみました!
試験では2枚のほ場を用意し、片方のほ場は推奨時間の最大値となる「2時間/10a」でIGAM2を稼働させ、もう片方は推奨時間を超える「4時間/10a」稼働させて、投入10日後の様子を比較しました。
結果は明らかで、推奨の2時間/10aを守ったほ場の苗は元気に成長していましたが、時間を超過させて4時間/10aで稼働したほ場では苗が倒れてしまい、苗に負担がかかっている様子が見られました。
アイガモロボの効果を最大限発揮しつつ稲の健康を保つためには、2時間以内/10aの稼働時間を守ることが大切です。みなさんもぜひ、適切な稼働時間での運用を心がけてください!
● 10a以下の小さいほ場で使用する場合
基本的には「2時間以内/10a」は変わりません。例えば、5aの場合は1日「1時間」からスタートし、苗の様子を見ながら適宜時間を減らしてください。
● 稼働時間を超過してしまった場合
万が一タイマー設定をせずに投入してしまい、10aあたりの稼働時間が2時間を超えてしまった場合、アイガモロボの通過後に苗が起き上がらないことがあります。丸1日以上経過しても苗が起き上がらない場合は、一時的にアイガモロボを休ませましょう。特に軟弱徒長気味の苗だと起こりやすいので注意しましょう。
● 代かき後に投入する際の稼働時間
前述の通り、代かきから田植えまでの期間が空く場合には、土の表面が硬化するのを防ぐため、本稼働前のアイガモロボ投入を推奨しています。この場合は、苗への影響を心配する必要がないため、基準値である2時間以内/10aを超えて稼働させても問題ありません。
また、1日の総稼働時間が10時間を超える場合も問題ありませんが、動力源が太陽光発電のため、稼働は太陽が出ている間に限定してください。
稼働に必要な水位の維持
抑草を成功させるためには、稼働期間中に適切な水位を維持することが非常に重要です。毎日水位をチェックし、5~10cmの範囲をキープしましょう。
適切な水位を保つことでアイガモロボの航行が順調に進み、抑草効果も安定します。また、水位が低い状態でロボットが航行すると苗の生育に悪影響を与える可能性があり、健康な成長を妨げることに繋がります。
水位管理をしっかりと行うことで、ロボットの稼働が順調に進み、最良の結果が得られます。
稼働中の管理
アイガモロボをスムーズに動かし続けるためには、日々の農作業の延長として見守りも大切です。アプリを使い航行軌跡も確認しながら、何か問題が発生した際はすみやかに対応することで、性能を十分に引き出すことができます。
● 毎日の確認でアイガモロボをサポート
アイガモロボは基本的に自律航行するため、常に監視する必要はありません。しかし、アイガモロボの抑草効果を最大限に発揮するためには、毎日現地での確認を強く推奨します。
例えば水位が5cm以下に下がっている場合は適切に入水し、ロボットがスタックしていないか確認しましょう。また、苗が丸1日以上倒れたままになっているような場合は、一時的に稼働を停止して苗への影響を軽減することが重要です。
日々の見守りが、効率的な抑草効果を引き出します。
● ソーラーパネルの清掃を忘れずに
泥はねや鳥の糞などでソーラーパネルが汚れると、発電が妨げられることがあります。汚れを見つけたら早めに拭き取り、ロボットがスムーズに充電できるようにしましょう。
● 藻が発生した場合
少量の藻であれば稼働に支障はありませんが、種類によってはブラシに絡みついたり、苗に絡む場合があります。
このような場合は運用を一時停止し、絡みついた藻を取り除いてください。
また、大量の藻が発生して水面を覆いつくした場合は、ロボットを一時的に引き上げ、藻を除去した後に再度投入し、運用を再開しましょう。
● 悪天候への対応方法
バッテリの電力が足りなくなってアイガモロボが動かなくなることがありますが、雑草の生育も緩慢になるため抑草効果にも大きな問題は発生しません。その後天候が回復し太陽光発電で充電がたまり次第、自動的に復帰します。
悪天候が続く場合は、バッテリを取り外し、オプションの充電器で充電することも可能です。
● 水田除草機との併用もオススメ
水位不足などによるスタック状態の継続や、天候不順に起因する航行不足、選定したほ場の条件などによっては、アイガモロボを稼働させていても雑草が発生してしまうことがあります。そのような場合は、水田除草機との併用がおすすめです。
アイガモロボを一時引き上げて除草作業を行い、その後再投入することで、雑草被害を最小限に抑えることができます。
例えば、田植え前に雑草が生えている場合は除草機で取り除いた後にアイガモロボを投入するのも良いですし、ロボット引き上げ後に雑草が発生した場合はそのまま除草機を活用する方法も効果的です。
アイガモロボの抑草効果と水田除草機による物理的な除草の二段構えで、より効果的な雑草対策を目指しましょう!
引き上げのタイミング
アイガモロボを投入してから3~5週間が経過し、草丈が30~40cm 程度になったころが引き上げのタイミングです。
この頃になると、稲の生育が進みロボットの推進力では動きが鈍くなってきます。
また、第二分げつ期に過剰な稼働を行うと徒長の可能性が高まる場合がありますので、適切なタイミングで田んぼから引き上げましょう。
稼働終了の目安
この動画のように、草丈が伸びて動きが緩慢になってきた頃が、適切な終了時期です。
● 5週間稼働させる際のポイント
基本的には3週間の稼働で十分な抑草効果を発揮しますが、後期発生の雑草が多い場合や雑草量自体が多い場合には、稼働期間を延長することも選択肢の一つです。
5週間まで稼働させる場合は、推奨稼働時間の10aあたり2時間以内を守り、稲の生育状況を観察しながら無理のない範囲の期間まで稼働させてください。
状況に応じて柔軟に調整し、稲に負担をかけない運用を心がけましょう。
頼るだけじゃない!賢い雑草対策を
アイガモロボは、雑草を抜き取る「除草」ではなく、雑草の生育を抑制する「抑草」がコンセプトです。
この抑草効果は、水のにごり具合やほ場の土質、ロボットの稼働時間などの基本設定や日々の管理など、さまざまな要素の影響によりほ場ごとに異なります。そのため、ほ場の状態を観察し、必要に応じて水田除草機も併用するなど、雑草の発生程度を考慮しながら最適な使用方法を選択することが重要です。
この活用ガイドを参考にアイガモロボを効果的に使いつつ、従来の雑草対策も組み合わせた柔軟なアプローチで、効率的かつ効果的な雑草管理を目指しましょう!